ヴェネツィア・ビエンナーレ「現代アートのオリンピック」

2017/10/8

今年の春、TsuNaGu8はご縁があって現代アート作家、岩崎貴宏さんと出会いました。
そして岩崎さんの作品に導かれ、ヴェネツィアへと旅立ったのです。
アートの祭典、ヴェネツィア・ビエンナーレに集う魅力的な方々との多くの出会い。
この美しい街と、そこで暮らす素敵な人たち。
二年に一度、アートをテーマに人が集まり、アートを媒介として、さまざまな人の出会いが生まれる。
TsuNaGu8は、もう完全にヴェネツィアの魅力に
ノックアウトされてしまいました。

ヴェネツィア・ビエンナーレを訪ねて

ヴェネツィア・ビエンナーレはイタリアのヴェネツィアで1895年からほぼ2年毎に開催され、120年以上の歴史を持つ、世界最大規模の国際現代アート展。TsuNaGu8は、今年5月、このヴェネツィア・ビエンナーレを訪ねました。万国博覧会をモデルにして国が出展単位となり、各回ごとに、ヴェネツィア・ビエンナーレ財団によって任命された総合ディレクターがテーマを設定。「現代アートのオリンピック」とも称されています。

今年の第57回は120カ国が参加し、総合ディレクターのクリスティーヌ・マセルがキュレーションした企画展 VIVAARTE VIVAには、世界51カ国から120名のアーティストが招待されました。

イン会場のジャルデイーニをグランドカナルから見る。

メイン会場のジャルデイーニをグランドカナルから見る

メイン会場の一つジャルディーニは、18世紀ナポレオン・ボナパルトによって計画されたカステッロ公園にあり、ここにパビリオンを所有する国は日本を含む29カ国。その他の国々は、もう一つのメイン会場の旧国立造船所跡のアルセナールや市内のパラッツォ(屋敷)など、他の施設を利用し作品を展示しています。

ビエンナーレの長い歴史には、二つの大戦や、1938年に始まったグランプリ(国際大賞)制度による国家同士の競争が激化したことの影響が刻まれています。美術関係者と参加国によるボイコット、アーティストによる出展拒否により、開催中止や延期したこともあります。それらの問題解決の為に、国重視からアーティストを重視し権威主義を払拭するための改革が行われました。1976年から優秀賞(金獅子賞)の導入、さらに1980年には「アペルト」、若手アーティストを紹介する部門を設けるなど、新しいアート傾向を反映する取り組みも行われ、今もなお世界の現代アートを牽引しています。

ビエンナーレとはイタリア語で「隔年」の意味。近年世界各地で開催されているビエンナーレやトリエンナーレ「3年毎」と名のつく芸術祭の多くは、このヴェネツィア・ビエンナーレがモデルケースとなっています。日本でも今年は、第4回横浜トリエンナーレが開催されています 。(会期:2017年8月4日〜11月5日 )

ジャルデイーニ会場入り口/ペギー・グッケンハイム美術館/ABDOULAYE KONATEの国際展出品を祝うパーティーで

フランス館へ

フランス代表のザビエル・ヴェイハン(1963年リヨン生まれ)は、イタリア未来派を彷彿とさせる物理と運動を形にしたようなスピード感溢れる彫刻と、知覚、歴史、現代と時空の概念を取り扱った絵画、インスタレーション、映画やライブパフォーマンスを展開してきました。

「スタジオ・ヴェネツィア」は、そのヴェイハンが、1912年にヴェネツィアのエンジニアFaust Finziによって設計されたフランスパビリオンを、世界各地のプロミュージシャンがライブ演奏を録音する収録スタジオに変身させたもの。自らが楽器のデザインと制作も行い、期間中は、世界各地から100人以上のミュージシャンやグループを招待して、来場者や聴衆のために作曲、演奏を行います。

アーティストのクリスチャン・マークレイ/フランス館にて。ヴェイハン・デザインの楽器を演奏するミュージシャン

ヴェイハン本人も「アートはもはや自己の表現ではありません」として、期間中ヴェネツィアに滞在し、ミュージシャン達と共同作業を行う徹底ぶりです。「スタジオ・ヴェネツィア」は、来年6月にはブエノスアイレス、秋にはリスボンで活動が継続されます。

*今回のヴェイハンのプロジェクトに対し、日本を代表する現代アートコレクションのタグチ・アートコレクションが支援しています。

フランス代表のザヴィエ・ヴェイハン/オードリー・アズレィ フランス文化大臣/アーウィン・ワームの作品“One Minute Sculpture”

Forza Giappone 日本代表 岩崎貴宏

我らが日本代表の岩崎貴宏(1975年広島県生まれ)は、広島市立大学芸術学研究科博士後期課程修了、エジンバラ・カレッジ・オブ・アート大学院修了、現在は広島を拠点に活動を続けています。身近なものを素材に使い、原子力、公害といった日本の抱える問題や歴史的考察も反映させながら、職人的な手を動かす技術を結晶化した繊細な作品を作り上げます。岩崎を選出し日本館をキュレーションする鷲田めるろ(1973年京都府生まれ)は、金沢21世紀美術館のキュレーターとして、妹島和世+西沢立衛/ SANAAや島袋道浩などの個展を手がけています。彼は「日常的素材、見立て、繊細な手仕事といった岩崎の作品の特徴は日本的である」として、多くの来場者に岩崎の独自の表現による「日本的であること」を楽しんでもらいたいと語っています。

岩崎貴宏/「リフレクション・モデルシリーズ」

展覧会タイトルは、「Upside-Down Forest ―逆さにすれば森―逆さにすれば森—」 「リフレクション・シリーズ」は大内文化の最高傑作といわれる国宝、「瑠璃光寺五重の塔」や、台風で壊れた「厳島神社」をモデルにして、歴史的建造物が揺らぎのない水面に美しく映し出される時を凍結していて、視覚情報から複数の知覚が沸きあがってくる作品です。

TsuNaGu8が日本館と日本代表をサポート

「オリンピックは参加することに意義がある」ですが、ビエンナーレは世界に向けて自国のアートを発信する大きなチャンス。「作品を作るのも人」「鑑賞し評価するのも人」であれば、水の都ヴェネツィアに2年に一度集結する現代アートの動向を牽引する人々と繋がり、価値を伝える活動が必要なのです。

日本館は1955年、ブリジストン会長の石橋正二郎氏が外務省の要請で資金を寄付、外務省予算と合わせて建設することができました。現在、参加120カ国のうちメイン会場ジャルディーニに自国のパビリオンを持てるのはたった29カ国、この時の石橋氏の資金提供は今ではとても大きな意味と価値を持っていることがわかります。

ただ、世界各国の美術関係者を招いて行われるソーシャル・イベントは、日本館の展示を主催する国際交流基金だけでは充分ではありません。正他の国と比べ見劣りすることも多かったのですが、2017年はつなぐ-en-システムとE&KAssociates+URANOの支援によって盛会で今後岩崎さんにさらなる活躍が期待できる夜となりました。この支援が石橋氏の時と同様に、日本の現代アートの将来に大きな意味を持つことになるでしょう。

「アウト・オブ・ディスオーダー」は岩崎がある日、適当に投げたタオルが山に見えたことから、タオルを山や丘陵に見立てています

吉村本誌発行人/ディレクターのスウ・ジュンスクさん/ディレクター 三潴末雄さん

水の都で、「縁をつなぐ」を実践

現在、日本館に展示されている世界の注目を浴びる岩崎貴宏Reflection Model (Lapis Lazuli)2014 年(五重の塔)はつなぐ-en-システムの所有する作品です。私も筆者として、この雑誌が作品と50万人と予測される来場者の縁をつないで下さったことに、アーティストと関係者の皆さんと共に深く感謝いたします。

ⓒ Venice Project 2017: TAKAHIRO IWASAKI meets TAKASHI KOJIMA. 監修:岩崎貴宏 ジュエリーデザイン・製作:小嶋崇嗣 特別協力:西澤弘子 企画/ プロデュース:E&K Associates + URANO 岩崎貴宏氏の監修の下、現代ジュエリーデザイナー小嶋崇嗣氏によるオリジナルデザインで制作されたピン・ブローチを数量限定で販売し、 集まった資金をビエンナーレ・オープニング時のソーシャル・イベント費用に充当しています

この記事の掲載号

2017 AUTUMN

TsuNaGu8 特別企画

Venezia × Art オーダーメイド『空の旅』

HAPPY TsuNaGu コレクション 2017 inTOKYO

全ての賃貸オーナーに贈る!出会いと感動のフェスタ

特集 Venezia × Art

アートに誘われて ヴェネツィアへ
ほか

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